二〇世紀文学としての「プロレタリア文学」

――さまざまな経路から――

全体として言えば、もっと微視的に、読むにたえぬ作品や、途中で消えた作家たちをも含めて「プロレタリア文学」の全体を、そっくりそのままうけとめる必要があるのではないか、とわたしは思う。一面的な知識や抽象化された論理の上にたった発言や、展望を見失った、バランスのとれない評論が多すぎたのではなかったろうか。 
                            
「戦後におけるプロレタリア文学研究の問題」より)

〔収録作品〕

「種蒔く人」再読/政治と文学/『海に生くる人々』解説/『セメント樽の中の手紙』案内/葉山嘉樹断想/岩藤雪夫試論『賃金奴隷宣言』をめぐって/武田麟太郎の見直しのために/高見順におけるおとし穴/ 『プロレタリア芸術』、『前衛』/『戦旗』/『ナップ』/「平和」と「民族」をめぐっての雑感 

祖父江昭二・著

●A5判 /504㌻

●2016年3月刊行

(本体価格6000円)

久保栄・「新劇」の思想

久保氏の「マルクス主義」、一般化していえば、思想は、この時代の刻印がおされてはいないだろうか。あのすぐれた氏のリアリズム論や『五稜郭血書』などを、わたしはそういうものとしてうけとめている。しかし、それは、久保氏が、この時代の、もう少し広くいえば、戦前のマルクス主義の諸成果を、広く、しかも最高度に身につけ、血肉化した数少い人たちのひとりである、と評価した上でのことでなければなるまい。((中略)日本に特有な、あの「珠数つなぎの転向」現象の中で、非転向でおし通し、公判で「マルクス主義であることを止めるわけにはいかない」と言い切ることができたのも、氏が「マルクス主義」を身につけた人なればこそであった。

〔収録作品〕

久保栄論序説/芸術的抵抗と孤立/久保栄氏の遺したもの/久保栄における「ドラマ」と「ロマン」/『火山灰地』はむつかしいか/『火山灰地』解説/久保栄と「マルクス主義への道」/日記とは一体/久保栄没後十年/久保栄『五稜郭血書』/久保栄―民藝の『火山灰地』―/久保栄と『火山灰地』/「日本の気象」(五幕)/久保栄と劇団民藝の尽きせぬ共鳴/大勢に流されず〝良心〟の声あげて/『火山灰地』雑感/評 村上一郎著『久保栄論』//新劇における社会的テーマの追究/新協・新築地時代/新協劇団/五〇年前のスケッチ 

祖父江昭二・著

●A5判 /537㌻

●2018年3月刊行

(本体価格6500円)